北京五輪「男子100m 人類はどこまで速くなるのか!?」
北京五輪100m決勝でウサイン・ボルト(ジャマイカ)が自身の持つ世界記録を更新する9秒69をマークした。その〝瞬間〟を目撃した9万人は全員が興奮状態だった。レースが終わり、正式タイムが表示された頃には、ぼく の周りは全員が立っていた。スタンディングオベーションというやつだ。もう席には座っていられないくらいの感動がそこにはあった。
オリンピックの100mは世界で一番速い男を決める決闘の場所だと思 っていたけど、今回はボルトのためだけのレースだった。100mの直線をただ走るだけ。これだけシンプルな競技は他にない。でも、これぞキング・オブ・スポーツに間違いない。地球上に存在した誰もが経験したことのある〝駆けっこ〟の究極のかたち。その頂点にボルトは立ったのだ。
21歳のボルトは今年から100mに本格参戦してきたスプリンター。北京五輪の前に9秒72の世界記録を樹立したが、世界の強豪たちのとのガチンコ勝負の経験は少なく、100mチャンピオンという存在ではなかった。しかし、今回の北京五輪の優勝で正真証明の王者になった。いや、もうライバルたちに「ボルトには勝てない」と思わせるだけの圧倒的な実力差を見せつけた。
中盤で抜け出したボルトはラスト20mから勝利を確信して、喜びのジェスチャーを披露。決して、100mを全速力で駆け抜けたわけではなかった。それでも、9秒69。人類が誰も到達したことのない9秒6台に楽々と足を踏み入れたのだ。
1988年のソウル五輪でベン・ジョンソンが幻の9秒79をマークしたが、このタイムは当時の常識としては考えられないくらいの記録で、100年間は破られないだろうという専門家もいた。しかし、あれから20年。ボルトは終盤流しながらも、改造人間がマークした記録を0.1秒も上回った。ぼくは思う。もしかすると人類に〝限界〟はないのかもしれないと。ボルトはまだ21歳。これからの成長を考えると、昨年までは誰もイメージすることができなかった9秒5台という世界がリアルに感じられるようになったのだから。
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